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フィジカル・カタルシス|穂の国とよはし芸術劇場PLATにて。スペースノットブランクのダンス・レジデンス滞在日誌『ほほえみ』1日目

2019年11月25日、月曜日。

豊橋にいます。

穂の国とよはし芸術劇場PLATの創造活動室Bに。
創造活動室Bは一面ガラスで外から丸見えで、見られているかもしれないエゴに気恥ずかしくなりますが気のせいです。高校生たちは一所懸命机に向かっていて、カーテンを閉めてしまえば済むこと。でもそれはそれで見せるタイプの変態ではなく見せるタイプの身体ではなくなってしまうので、身体はオープンしていこうと思います。

オープンすると神々しい銀盤が小野彩加の神々しさを助長して、目を細めないとダンスが不可視。フィジカル・カタルシス略してフィジカタにはいまのところ5つのフェーズがあり、ダンス・レジデンスでは第3のフェーズのことだけを考えます。現象を分解し、部分を探究し、単一的な生産をどれだけ行なうことができるのかを考えます。競馬のことをギャンブルとしてではなく競走馬が美しいから好き、という人なら楽しんでいただけると思います。

自転車を漕いで埠頭に向かいました。ふと左に目をやると。

見たことのない漢字。親切にふりがながふってあるので変換してみると、奎、すぐに出てきました。意味はどうでもよくて、シンメトリーなフォントと土オン土オン大の雄雄しさに惹かれました。第3のフェーズでは主に形について考えていて、人という字は人と人が支え合っている、というように漢字の形は人の身体に通じる点が多いのではないでしょうか。漢字に音読みと訓読みがあるように、漢字の形に身体で応えることで様々に読むことができるような気がします。と思いきやその隣で。

街の下半身が蛇腹に沈んでいました。下の文字を読もうとすると「父通女王協云豆稿又」と読めなくもない。完成された漢字の形が三次元の力に敗北あるいは二次元と三次元のコラボレーション。そもそも完成形なんてないのかも。大腿四頭筋がパンプアップしはじめたのもこの頃。

中央の白い棒に注目してください。上部で二股に分かれていて、中部からも二股が生えているのがわかると思います。左に三歩、歩いてください。

実は奥に同じ白い棒がもう一本あるだけでした。見る角度によって遠近感が失われ、形が複合する現象。二次元の逆襲。動画配信サイトで千手観音のようにひとりの人から手がたくさん生えているような踊りを見たことがある方もいらっしゃるかと思います。二次元に化かされる前に真横から見てやりましょう。一箇所から見えるものが形のすべてではないこと(を知っているはずなの)に気がつくと、ものを色んな角度から見るのが楽しくなります。すでにサドルにどの角度からお尻を乗せても痛いです。

翼の折れたかもめ。折れる前の形を見たことがないので、何かが足りないと思うこともありません。原形を知っているのは本人だけ。ちなみにこの直前に小野彩加に鳥のフンが落ちました。言わなければ誰も知ることはなかったのに。

矢印、興味深い形と形が連携しています。矢印の示す方向に東京の地下鉄では惑わされることも。

リサイクルの矢印、各センター折り返し部が細まっているだけで絞られているように見える。形を決めるのは人間のエゴでしかないのかも、と思いはじめて、スロットル(ないけど)全開。

今日いちばん(今日イチ)意識したのは、移動する身体についてでした。直線をひたすらサイクリングしていたせいか三人称視点になる瞬間があり、自転車を降りて、形を撮影して、自転車に乗って、を繰り返している自分の身体の形が見えてきて、それが移動しているという事実に次の形の展開があるようなないような手応えを感じました。

移動する身体は創造活動室Bから埠頭を経由して創造活動室Bへ。帰れる場所があるんだ。こんなに嬉しいことはない。

形の旅がはじまりました。

中澤陽


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