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ウエア/ハワワ|小野彩加 中澤陽:メッセージ

ウエアが終わり、ハワワが始まります。

原作の池田亮さんが2018年5月から2020年1月にかけて創造した『ウエア』(2020年3月初演)と、2020年2月から2021年10月にかけて創造した『ハワワ』(2022年1月初演)。二つの作品の物語に明確なつながりはありませんが、どちらも池田さんが作るさまざまな何かのボツ、そこで生まれる鬱屈や嫌悪感が詰まっている点に於いて関連しています。それは池田さんが隠している裏側をただ曝け出してしまおうとしているのではなく、池田さんがそれこそ表側かもしれないと疑い訴える行為なのだと解釈しています。目に見える部分と、目に見えない部分。言葉にできる意味と、言葉にできない意味。

スペースノットブランクは信頼したいと考えています。しかしその信頼は想像させるという「センス」を強く求める行為でもあります。文化芸術には概ね想像が伴い、想像によって人生が豊かになっていくという側面もありますが、想像するという「センス」にそもそも興味がない人にとってそれは無意味になってしまうのでしょうか。「ポップコーンムービー」という言葉があります。ポップコーン片手に気楽に良い意味で特に何も考えずに適当に笑ったりよそ見したりしながら見ても楽しめる映画を指す言葉だと認識しています。悪い意味に聞こえてしまう方もいるかもしれませんが、想像せずに目の前の出来事をただ楽しむことも、時には大切な気がします。現に近年は文化芸術の中を思考するより、時空間を漂うだけなことが多いような気もします。そこに手を伸ばし、触れようとすることで、広がっている宇宙のようなスペースを発見してください。出演者たちは言葉と身体を転がし続け、音楽と照明が細かく大胆に存在し、美術により立ち上がる空間がこれまでのスペースノットブランクを超越してごちゃまぜになっています。こまばアゴラ劇場に集まり、上演時間が成立することに多大な感謝を。一つ潜ればどっとしたねばねばしたものを思い出す。ひょっとハイになるものもある。身を委ねてみてください。『ウエア』と『ハワワ』がポップコーンムービーだと言い切るわけではありません。想像しないと想像するのどちらもを選択可能にしてみました。原作でも「ボレロ」か「キャラヴァン」を選ぶことができるように、流れる「ボレロ」が「キャラヴァン」だと思ってもいいです。

漂う無意識と、集中する意識とは別にある余暇を、お楽しみください。

2022年1月15日(土)小野彩加 中澤陽 スペースノットブランク

ウエア
ハワワ

イントロダクション:植村朔也
メッセージ:小野彩加と中澤陽
インタビュー:池田亮額田大志
出演者インタビュー:荒木知佳と大須みづほ古賀友樹と鈴鹿通儀奈良悠加

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