言葉だけでは満ちたりぬ舞台|クリエーションメンバーによる制作雑記「クリエーションボンバー」Vol.6
古賀友樹 こが・ゆうき
1993年9月30日生まれ。俳優。〈プリッシマ〉所属。これまでに俳優として、ゆうめい「みんな」「弟兄」「巛」、劇団献身「最悪な大人」「幕張の憶測」「死にたい夜の外伝」、スペースノットブランク「デーモン・ネーション」「緑のカラー」「共有するビヘイビア」「ラブ・ダイアローグ・ナウ」「ネイティブ」「舞台らしき舞台されど舞台」などの作品に参加している。
「言葉だけでは満ちたりぬ舞台」では、クリエーションメンバーとして出演者を務める。
この文章を読んでいるということは、僕はもうこの舞台を終えたということでしょう。いま僕はこの文章を舞台の上で書いています。観客に背中を向けてこっそり書いています。ペンを取り出してか、iPhoneを取り出してか、どちらなのかは秘密です。そもそも嘘かもしれません。
僕は「舞台が過ぎていったなあ」と感じることが多くて、食道を食べ物が通過していく感覚と近しいかもしれません。過ぎるというのは、決して悪い意味ではない。食べ物だったら自分の血となり肉となる。舞台の場合どうなるか。
「言葉だけでは満ちたりぬ舞台」は過ぎるべくして過ぎていきました。多くの人が舞台の上を行き交い、言葉を交わし、離れていく。距離はどんどん離れていく。そして忘れる。無くなるわけではありません。認識の問題でしょう。
話を少し戻し、今回はプロ・アマ問わずの公募で、最終的には12名が企画に参加、そこにプラスツー(クリエーションメンバーである古賀友樹と近藤千紘)、計14名が出演しました。常套句を言うならば、この14人でしか出来ないことをやりました。一人でも欠けたり足したりすれば、この作品のバランスは全く違うものになっていると思います。15人だったら15人なりの。100人だったら100人なりの作品は作れないことはないんでしょうけど、ちょっと今は想像つかないですね。あれ、どうやって上演するんだろう。いや、もしかしてこれは14人でないとダメなのかな。100人がダメはわかる。50人はダメで49人はギリギリ大丈夫。49人じゃないかもしれないけど、そのギリギリ大丈夫のラインって一体なんなんだ。たったひとりの差なのに。もう終えてしまっている立場だからかもしれないけど、ただの水増しになる気がしてならない。あーじゃあいいです、14人でしか上演出来ません。今書いた内容は全部忘れてください。各々鉛筆で上の何行か塗り潰しといてください。おっと、何故鉛筆というワードが出てきたんでしょうね。危ないところでした。
この文章こそ水増しが如く、内容がないような気もしますが、それだけスペシャルな14人の舞台にしたかったし、そうだったと胸を張りたいのです。ダジャレを言ったと思ってるでしょう。思ってるでしょう。ラスト15分、あなたは必ず騙される。意味はない。また会いましょう。
近藤千紘 こんどう・ちひろ
1993年11月10日生まれ。ダンサー、俳優。これまでにダンサーとして、DANCE PJ REVO「ハゲワシと少女」「Orange Gravity」、Empty-Kubrick「正午の伝説」、akakilike「シスターコンプレックスシンドローム」などの作品に参加。俳優として、ルサンチカ「春のめざめ」「メザスヒカリノサキニアルモノ若しくはパラダイス」、新聞家「白む」、女の子には内緒「光を束ねる」、スペースノットブランク「ネイティブ」「舞台らしき舞台されど舞台」などの作品に参加している。
「言葉だけでは満ちたりぬ舞台」では、クリエーションメンバーとして出演者を務める。
今は3月4日の0時10分です。布団でひとり横になっています。思い出します。今回の舞台。
生きていていろいろと選択しなきゃいけないことって多いじゃないですか、自販機レベルでもそうなんだけど、今回はその選択肢でたまたま選んでいってたら重なったから舞台したみたいな。全員が。
で、また普通に出発していくみたいな。全員が。
始まりと終わりがあったわけじゃなくて、通過点のような感じだなあと思っています。
だから来てくださったお客様もそういう感じでたまたま重なってて、だから3ステージ全然違う印象。でもどの回が一番よかったとかはなくて、どの回も皆さんがいてくれたから良くなった。
舞台を作っていて完成するっていう感覚はまだ味わったことがないけど、今回の舞台は毎ステージどこか到達出来ていた気がします。技術とかそういうんじゃなくて。
思い出せばたくさん感じたことってあるんだけど、言葉にしようとすると難しいですね。
あ、あと今回全員楽屋一緒で、席もみんなテキトーに決めてもらって、というかふわっと決まってて、待機中喋ってる人は喋ってたんですけど、みんなの話を聞いてると意外と知らなかったこととかがそこで見えてきて、この言葉(台詞)が出て来たのはこういう理由があったからなのか! って発見がいっぱいありました。詳しくは書けないんですけど。
電車で同じ車両に乗っている人たちがまた次もまるっきり同じ車両に乗ってるっていう確率って少ないじゃないですか! だから今後、街を歩いていて偶然周りが今回のメンバーで固められてる! みたいなことは絶対起きない。と思う。そんな奇妙なことが起きてしまったら過去のことでもこの舞台は別物になってしまうのかもしれない。
何が言いたいんだろうか…わからなくなってきたけど、偶然ってすごいこと、出会うってすごいことだって改めて思ったってことですね。
そして、なにより今回集まってくださった皆さんには、今後も健康で幸せであってほしいと思うってことです。
ありがとうございました! またね!
山下恵実 やました・めぐみ
1998年7月9日生まれ。演出家。〈ひとごと。〉主宰。
高校卒業後すぐに、こまばアゴラ演劇学校〈無隣館〉三期演出部に所属。
「言葉だけでは満ちたりぬ舞台」では、クリエーションメンバーとして演出補を務める。
ありがとうございました。
今日は雨も降っていて、どんよりしたマンデーですが、心の中はたくさんのラブで満杯です。この気持ちはたくさんの方々お陰だと思っています。この作品にともに関わって下さった皆さま、観に来てくださった皆さま、そしてこの文章たちを読んでくださってる方も、皆さまへ、スパシーバ。
2018年9月のWSから、それはそれはもうすごい数の秒が過ぎていって、たくさんの出会いがあって、もう思い出せないことも沢山あります。そういう思い出せない時間も全部含めて、ラブな気持ちです。
この企画が始動し始めて、稽古が始まって、本番を終えて、その時の中で何か変わったのかなー、変わってたらいいなと思うし、変わったんじゃないかとも思います。だってあらゆることが起こって、色んなものを見て、何も変わってることがなかったら、もったいない。私はどんどん変わっていきたいタイプ、アップデート、バージョンアップ、パワーアップしたい。でも何が変わったのかなんて誰も気づいてくれないかも。自分自身だって気づかないかもしれないですね。
それでも確かに少しずつ変化していくはずなので、同じ上演が繰り返されることは、二度とない。上演期間だった3月1日から3月3日の3日間だって毎日新しい作品を上演してた気持ちでいます。
だから、あらゆる偶然と奇跡が積み重なって「言葉だけでは満ちたりぬ舞台」は上演されていた、って言うとちょっと素敵な感じがしますね。当たり前のことを言っただけなんですけど、当たり前なことなんてなにもないのでたぶん。あらゆる偶然、必然、運命に感謝します。
いろんな気持ちを言葉にしようと思うと難しくて脳みそがガチガチになってしまうのでこのへんで。
本日はたいへんお忙しい中、大切なお時間と、指と頭と目と身体中の筋肉を使ってこの文章を読んで下さりありがとうございました。愛をこめて。
◉言葉だけでは満ちたりぬ舞台|作品概要
◉言葉だけでは満ちたりぬ舞台|ステートメント
◉言葉だけでは満ちたりぬ舞台|クリエーションメンバーによる制作雑記「クリエーションボンバー」Vol.1
◉言葉だけでは満ちたりぬ舞台|クリエーションメンバーによる制作雑記「クリエーションボンバー」Vol.2
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◉言葉だけでは満ちたりぬ舞台|クリエーションメンバーによる制作雑記「クリエーションボンバー」Vol.5
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クリエーションメンバー|古賀友樹 近藤千紘 山下恵実