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言葉だけでは満ちたりぬ舞台|クリエーションメンバーによる制作雑記「クリエーションボンバー」Vol.3

古賀友樹 Yuki Koga
1993年9月30日生まれ。俳優。〈プリッシマ〉所属。これまでに俳優として、ゆうめい『みんな』『弟兄』『巛』、劇団献身『最悪な大人』『幕張の憶測』『死にたい夜の外伝』、スペースノットブランク『デーモン・ネーション』『緑のカラー』『共有するビヘイビア』『ラブ・ダイアローグ・ナウ』『ネイティブ』『舞台らしき舞台されど舞台』などの作品に参加している。
『言葉だけでは満ちたりぬ舞台』では、クリエーションメンバーとして出演者を務める。
近藤千紘 Chihiro Kondo
1993年11月10日生まれ。ダンサー、俳優。これまでにダンサーとして、DANCE PJ REVO『ハゲワシと少女』『Orange Gravity』、Empty-Kubrick『正午の伝説』、akakilike『シスターコンプレックスシンドローム』などの作品に参加。俳優として、ルサンチカ『春のめざめ』『メザスヒカリノサキニアルモノ若しくはパラダイス』、新聞家『白む』、女の子には内緒『光を束ねる』、スペースノットブランク『ネイティブ』『舞台らしき舞台されど舞台』などの作品に参加している。
『言葉だけでは満ちたりぬ舞台』では、クリエーションメンバーとして出演者を務める。
山下恵実 Megumi Yamashita
1998年7月9日生まれ。演出家。〈ひとごと。〉主宰。
高校卒業後すぐに、こまばアゴラ演劇学校〈無隣館〉三期演出部に所属。
『言葉だけでは満ちたりぬ舞台』では、クリエーションメンバーとして演出補を務める。

Loop #1

古賀友樹:ここにクックパッドの和菓子特集のURLを一旦載せたのだが、消した。書いて消したという事実だけが残った。嘘かもしれない。
クリエーションはお互いがお互いに作用し合う。作品はその集合知と言うべきか。誰かが和菓子の話をしたらいつのまに頭の中は和菓子になって、和菓子がクリエーションに紛れ込み、作品は和菓子に侵食されるであろう。でも和菓子舞台っていいかもしれないですね。いやなにおいとかしなさそう。ただ、粉っぽい感じはしますよね。「わかる〜」。

近藤千紘:本格的な稽古の前に2日間ワークショップをした。
みんなには久しぶりに会えて嬉しかったし、古賀くんがパーマあててたし、わたしは髪の毛を切っていた。途中で聞いたお海苔の専門店の話を聞いて絶対合羽橋行くぞと思った。そしてその4日後くらいに本当に行って海苔買った。
とにかく今は新しい何かに出会いたくて、みんなの話を聞くといろんなことをしたくなるし、真似もしたくなる。今は和菓子作りしたい。教えて欲しい。

山下恵実:私は弾力がすごそうだなって思いました。和菓子演劇。
で、こういうことが稽古場でも起こっていて、粉っぽいって思う人もいれば、もちみたいなのをイメージする人もいる、みたいな。昨日の稽古で対立する意見が出た時の展開はちょっとアツかったな。
あと、中学生の頃のこととか思い出したりしてます。稽古みながら。それで、舞台上で起きてることが色んな人のこれまでとか、思考とかの断片とコネクトして、すごい大きい世界まで飛んでいったらいいなとかちょっと思いました。大きい世界ってなんか宇宙を想像しちゃう。短絡的?

下北沢にて。五右衛門も、植木にまでは、手をださず。

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Loop #2

古賀友樹:確かに宇宙に行ってきました、って言ってくれたら嬉しいですね。本当かどうかはさておいて、こちらは勝手に楽しい気分になるから良いと思います。でも10人いて、10人が10人とも宇宙に行ってきました、と言ってきたら僕はその人達を受け入れられないかもしれない。それぞれが自由意思で判断したのであれば間違いはないのだけど、とても大きな何かを嫌でも意識してしまう。
同じ行動であったとしても、意識してやるか無意識でやるかで強度は違ってくる。うまくはまとまらないのだけど、自分という存在は、自分の要素と他人の要素を混ぜ合わせた何かだっていうことです。自分は喋ってるのか、相手に喋らせられているのか、みたいなよくあるやつです。

近藤千紘:宇宙で思い出したんだけど、1月のワークショップで1時間だけ各々自由に外に出て、いろんなものと出会って、写真を撮って戻ってくるみたいなことをやって、そのときに「宇宙に行って戻ってきて写真は地球を撮りました」みたいな人がいたらいいのにって思ったことを思い出した。わたしからしたらみんな変わってるし、気持ちが全く一緒人間っていないから、そういう人たちの話を聞くと全て新鮮だし、でもわたし難しい言葉とかわからないから時々「?」ってなってわたしがどこかへ飛んで行くときある。ギャラクシー羊羹作ろうって思う。

山下恵実:自分で喋るよりも、喋らされてる方が楽だし、考えるより流される方が楽だし、Netflixみるより眠る方が楽。
でも楽と楽しいは、漢字同じだけど結構違うって思うし、そう信じたい。10人みんなが宇宙に行ったらって話読んでそう思った。
最近のリハーサルも、からだとか、言葉とか、意識とか、いろいろ考えなきゃいけなくて、大変そう。たぶん、私はうまくできないと思う。でも見てて楽しいし、体が動き出したいって言ってる時とかあるし、やってみたらいろんな発見がありそう。
こんなこと言っておきながら毎朝起きれない、ごめん、もうちょっとって二度寝してる。眠るのは楽しくはないけど、楽だし、幸せ。

下北沢にて。白いチェーンに縛られた黄色いポール。

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Loop #3

古賀友樹:上手く言葉に出来ない、当てはめることが出来ないことがよくあります。「なんだかよくわからないけどおもしろい」こいつが本当に困ったやつです。もう少しで言語化出来そうなんだけど、まあいっか。…これ、夢を見てすぐ忘れることとよく似ていません? 確かに今、目の前を何かが通過した。僕らはついついこれが何者かをつきとめようとするけれど、正体はわからないままでいいのかもしれない。1人だけが正解を知っているより、10人が何かいたよね、そうだよねと言い合ってる方が意味がある気がする。1人がそいつを手懐けるより、10人の頭の中でぼんやりとその輪郭を思い浮かべたら、いつかとんでもないモンスターが生まれるかもしれません。
今回のスローガン、イズ、正しさというまやかしに打ち勝つ勇気を持ちたい、です。

近藤千紘:わたしも寝たい。昨日、二度寝して1時間45分の遅刻をした。それはあかん。
悩んでることがあっても寝たら忘れるというか寝たらどうでもよくなるみたいなことある。そういうののためにも寝てる。だから昨日の二度寝の失敗は寝て忘れた。でもセリフとかは寝て覚えるみたいなのもある。寝るってすごい。稽古見ててこれ夢なんかなって思うときある。夢ってよくわからないし、ぶっ飛んでる時あるし、でも頭の中がゴロゴロ出てきちゃってるんだろうなあって。そういうのが今回の稽古場でいっぱいある。気がする。まだまだ制作途中だけど今回の作品絶対面白いだろうなぁって思う。見てると内側を刺激される感じ。そういうのってこわいけどな。

山下恵実:パクチー初めて食べた時に、この三つ葉おいしい、って言ってちょっと恥ずかしい思いをしたことがある私ですが、どっちにしろおいしかったっていうことに変わりはないですよね? ないと思っています、私は。
大勢の正しいとか、立場が上の人の正しいは強くて、惑わされがちだけど、人の正しいにビビったり頼ったりしないで、自分がしっくりくる答えを自分で見つけられたらいい。
これは、この作品つくっていく中でも何回も聞いてる言葉で、本当にそうだと思う。
みんなその難しさと戦ってるし、この先も戦っていってほしい。出演者たちも、お客さんも、わたしも、みんな。そんな感じです。

下北沢にて。ワークエイトアワーズ。スリープエイトアワーズ。プレイエイトアワーズ。

言葉だけでは満ちたりぬ舞台

クリエーションメンバーによる制作雑記「クリエーションボンバー」
Vol.1:ワークショップについて
Vol.2:年末年始について
Vol.3:制作について
Vol.4:出演者たちについて
Vol.5:公演に向けて
Vol.6:公演を終えて
Vol.7:公演を終えて一ヶ月が経って

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