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緑のカラー|荒木知佳:出演者インタビュー

スペースノットブランクの作品に、初めての参加となる荒木知佳。現在大学四年生の彼女が、小学生の頃から今に至るまでの変遷を章形式で聞いた。インタビューは石倉来輝との対談形式により、人々が行き交う街、渋谷にて行われた。


夜の渋谷にて。 撮影:石倉来輝

荒木知佳 あらき・ちか
1995年7月18日生まれ。俳優。多摩美術大学美術学部演劇舞踊デザイン学科在学。俳優として、天ぷら銀河『テレビ万歳』『魔法の魔法の魔法瓶』、ヨネスク『奥の森の方』、FUKAIPRODUCE羽衣『愛死に』などの作品に参加している。

目標があってそこに進む、とか、考えなきゃ、とかじゃなくて、常になんかわかんない状態、みたいな。

────石倉:ここまでの稽古は、どうですか?

荒木:わかんない、のが、おもしろい。なんか。

────石倉:わかんない。

荒木:自分、何してんだろ、みたいな。

────石倉:例えばどういった時に思うんですか?

荒木:なんか立ってて、寝ちゃったりとか。ずっと立ってて、無になっちゃった、呼吸をしていて、眠さもあり、目をつぶってたら、本当に寝ちゃってたらしくて、全然気づかなくて、ずっと目をつぶってたんだよね。そういうの、もう、わかんないから、おもしろいなあって。

────石倉:そんなこといままでありましたか。

荒木:ない。なんか、目標があってそこに進む、とか、考えなきゃ、とかじゃなくて、常になんかわかんない状態、みたいな。別にゴールとかもわかんないし、今、何が正解みたいなのもわかんないから、素でいれる、っていうか、なんだろうね、何も考えてない。頭は、常に。

────石倉:そういう、わかんない、に飛び込む時、何を信じて飛び込んでますか。

荒木:その日の気分。自分の気分。なんだろう。でも空間が結構、何をしてもいいよ、じゃないけど、すごい許される空間みたいなのが、そういうの初めてで、すごい良いなって思う。みんながフラットな感じ。

────石倉:荒木さんは、北海道出身だということ、上京してきたのは、大学で?

荒木:大学で。大学に、入るため。

────石倉:それは、演劇をやろうと思って?今も大学生なんですよね。

荒木:はい。多摩美の四年生。でも、別に演劇しようってわけじゃなくて。

────石倉:どうして上京ってことになったんですか?

荒木:雪が、嫌だったから。東京行きたくて、友達が多摩美の美術に入りたくて、でその子が調べてたら、演劇の新しい学科できるよ、みたいなの教えてくれて、それで、知佳なんかあってんじゃない、ってなって。一緒に東京行きたいし、一緒に行くか、って多摩美を受け、それで受かって。

────石倉:その新しい学科ができるよって時に、演劇に対する自分の興味っていうのはあったんですか?

荒木:ふざけて、小学校の夢で、女優、って書いてたの。あと、一回、市民ミュージカルみたいなのに、お母さんにやれやれすごいいわれて出て。いいじゃんみたいな。で、中学校の学芸会みたいなやつで、知佳、主役やれ、みたいな、そういうことはやったことあるけど。

────石倉:お母さんにやれっていわれてやってみて、自分の感情はどうでしたか?

荒木:普通に楽しかったけどね。でもバスケとかスポッチャしてる方が楽しかった。

────石倉:その頃は、バスケしてたんですね。

荒木:ずっとバスケしてた。スポーツしかしてなかった。

────石倉:振り返って、その時の荒木さんはどんな人でしたか。

荒木:小学校の時は、友達とコンビ組んで、ネタ考えて、先生に週一で見せて、点数をもらうっていうのをやったりしてた。先生も結構厳しい。60点だよ、とか。もう一回やって、とか。二人で作って、先生呼んで。バスケ部の部室とかでも、後輩座らせて、見せたりしてた。

────石倉:バスケ部は、中学校の頃ですか?

荒木:小中高。田舎だから、小中はみんな一緒。バスケ部は、小中高。

────石倉:その頃からお笑いが。人前で何かすることが好きだったんですね。

荒木:好きだった。笑ってくれるのがめっちゃ楽しかった。笑われるのが好き。

────石倉:どんなネタをやってたんですか。

荒木:ジャクソン、ジャクソン、マイケル・ジャクソン。みたいなやつ。

────石倉:コンビ名は?

荒木:プリプリプリン。恥ずかしい。


夜の渋谷にて。 撮影:石倉来輝

めっちゃ負けたくない。過去の自分とかに一番負けたくない。

────石倉:その頃から演劇を見たりしてましたか?

荒木:お母さんがめっちゃ好きだから。富良野塾とか、あとは劇団四季。ファンクラブ入ってて、見に行くぞみたいな感じで連れて行かれて。

────石倉:その頃はまだ将来何になるっていうのは。

荒木:なかった。女優とは書いてたけど、でも本気でなる。とは思ってなくて。

────石倉:その後、多摩美に入って、どうでしたか。

荒木:おもしろかった。多摩美で色んな友達ができた。八王子キャンパスとかとの関わり方とかが楽しかった。なんか美術みたいなのが楽しい。今は美術の方が興味ある。でも、舞踊も楽しかった。勅使川原さん(勅使川原三郎氏)楽しかった。こんな経験初めて、みたいな。三時間ジャンプし続けて、めっちゃ笑顔になってて。でも二年間やって、最後にはもう三人とかしかいなくて、でも私はずっといて、一回も休んでない。楽しかったから。

────石倉:そういう経験と、いままで見た演劇とかは、変わらなかった?

荒木:そもそも持ってなかったからなあ、価値観ていうのを。野田秀樹さんを知り、あ、こんな声出して動くんだ。スポーツやってたし、超楽しい。みたいな。で、うわあ!っていうの好きだったけど、でも知佳はちゃんとした演劇もした方がいいんじゃない、っていわれて、で柴さん(柴幸男氏)来て、台詞初めてちゃんと読む、みたいな。

────石倉:それまではちゃんとやってなかったんですか?

荒木:高都先生(高都幸男氏)も、とにかくやってみろ、みたいな感じだったから、一年生の頃は、集中して役考えてとかじゃなく。柴さんの授業になって、すごい台本を考えたりとか、普通の会話みたいな演劇、あるんだ、みたいな。そういう小劇場みたいなのを知って、あ、そういうのもあるんだなっていうのを知って。

────石倉:その辺りから、荒木さんは外部にも出演し始めるんですよね。

荒木:そうだね。呼んでいただいて。でも負けたくないみたいな気持ちがいっつもあるんだよね。負けず嫌い、みたいなの。ずっと。そういう大人の、プロみたいな人がいても、負けたくない。みたいなのをずっと思ってた。思いながらやってた。わかんないけど、若いから頑張ってるな、って思われるのが一番嫌だって思いながらやってた。外部は大人ばっかりだから。若いな、って見られたくないな、って思いながら、やってました。

────石倉:普段は穏やかでふわふわしている印象が第一印象であったので、そういう闘争心みたいなのがあるとは思ってませんでした。

荒木:そうなんだ。めっちゃ負けたくない。過去の自分とかに一番負けたくない。

────石倉:仲間とかじゃないんだ。同い年の人とか。

荒木:同い年の人はね、何も思わないんだよね。みんな違うから、みんなそれぞれだな、って思って。過去の自分とか、一番負けたくない。だから勅使川原さんのとかも、一回休んだら体力が衰えちゃうから、昨日より衰えてるのとかが、もうバスケとかも、一日100本打たないと。100本入るまで帰んなかったりしてた。そういう負けず嫌い。昨日よりも1本多く入れる。みたいな。精神が。マジ悔し泣きとかするもん。自分ができなくて。昨日はできたのに、みたいなのは、ある。

────石倉:外部に出てても、大学にいてもありましたか?

荒木:わかんない。ダンスとか、そういう体力的な問題かな。

────石倉:体力。今は22歳ですよね。

荒木:22歳。絶対、勅使川原メソッドずっとやってた時よりは、体力ない。もう本当嫌だ。やんなきゃって思ってる。最近。跳ばなきゃ。でも舞台何回も見に来てくれてて、成長してるなって思われないと、嫌だなってなる。前の方が良かったとかいわれると、うわあ、とかなる。


渋谷のカフェにて。 撮影:石倉来輝

東京はおもしろいですね。東京っていうか、こっち。色んな人がいるし。色んな場所があるし。

────石倉:自分の今までの人生を、章に分けるとしたら、どの辺りまでが第一章とかありますか?

荒木:第一章。小学校三年生まで。小三なって、バスケやったり。バスケやった理由が、めっちゃ太ってたの。すごいデブだったから、なんか痩せた方がいいなって思って、で小三から部活に入れるから、動けるやつやろうって思って、バスケ部に入って、で頑張るモチベーションはもう痩せるため、ずっと、常に。走るのとかも、みんなバテるんだけど、私はもう痩せるため、ってずっと思って、そしたらガリガリに痩せた。小六。小三から人生が変わった。男の子からも声掛けられるようになったし。今より昔は根暗で、全然喋らないし、恥ずかしがり屋の極み、みたいな感じだったんだけど、バスケ部入って、自信持ててから変わった。第一章はそこまで。金八先生って呼ばれてた、デブで、髪型が長いセンター分けだったから。

────石倉:第二章はどんな感じですか。

荒木:第二章は、小三から高校まで、かな。その間がめっちゃ痩せてて、一番自信持ってた時期。違う学校のバスケ部の男子が、私四番だったんだけど、なんか四番可愛い、っていわれてたりしてた。中学校にバスケ部がなかったから、自分たちでバスケのクラブチーム作って、学校の部活は卓球と陸上掛け持ちでやって、三つやってた。常に動く、みたいな。でピアノと、習字も習ってて、なんか自分イケイケって思ってた。なんでもできるぜ、って感じで思ってたけど、中三の高校受験で部活を辞めてから、また激太りして。動かないと、どんどん太る。


夜の渋谷にて。 撮影:石倉来輝

────石倉:そして第三章が。

荒木:第三章が、高校生。高校の三年間。すごかった。いじられて、ずっと日村のモノマネとか。トイレに呼び出されて、女子クラスメイトみんな女子トイレ入って、AKBのモノマネやれ。とか。いじめってほどにはいかないけど、知佳のネタ見に行くぞ!とか。全身タイツでパフォーマンスしたりしてた。やばいやつだった。共学で、全然モテなくて。もう、やばキャラナンバーツー。それを経て、友達が多摩美行こう、ってゆってくれた。あとはラジオやってた。地元のFMラジオ。私たちの高校が呼ばれる高校生枠があって、卒業する人がやりな、ってゆってくれて。で高校の頃やってた。

────石倉:高校の頃は、割とパフォーマンスの片鱗が。

荒木:片鱗あった。

────石倉:それを経て、第四章。

荒木:第四章。大学生。多摩美。大学入ってから、なんかちゃんと恋愛も経験した。経験ていうか、ちゃんと付き合うってことを知る、みたいな。それまではなんか微妙なよくわかんない感じだった。ちゃんとしてなかった。付き合うってこういうことなんだなあって。色んな男の人がいるんだなあって。大学すごかったなあ。東京はおもしろいですね。東京っていうか、こっち。色んな人がいるし。色んな場所があるし。

────石倉:北海道から東京に来て、一番違ったことというかびっくりしたことってなんですか?

荒木:梅雨がある。梅雨。なんだこれ、って思った。

────石倉:北海道にはない?

荒木:ない。あとエアコンは冷房だけだと思ってたの。だから一年の頃、冬、何もつけないで過ごしてた。寒すぎた。エアコンあるのに、暖房あるって知らなくて、東京寒い、って思って。北海道はね、部屋の中あったかいからね、めっちゃ。

────石倉:人の感じとかはどうですか。

荒木:道ゆく人は、他人て感じ。地元だとさ、通る人全員が知り合いって感じだから、鼻くそほじって歩いてたとするじゃん。で車ぶーんて通るとするじゃん。絶対知り合いに見られてんの。だからそういうのできない。でもこっちは、もう二度と会わない人ばっかりじゃん。だから鼻くそほじくったりとかしても、興味ないでしょ。こっちだと。見ないし、もう二度と会わない。だから自由でいれる、こっちの方が。向こうはもう、絶対知り合いだもん。


夜の渋谷にて。 撮影:石倉来輝

目標、理想みたいなのを、持たないようにしたいなあ。って。予想したくない。わかんないけど。

────石倉:スペースノットブランクの作品に参加するのは、初めてですよね? どうして出ようと思ったんですか?

荒木:声を掛けていただいたから。

────石倉:初めて作品を見た時はどうでしたか? (第8回せんがわ劇場演劇コンクールにて『ラブ・ダイアローグ・ナウ』)

荒木:なんだろう。なんか見たことない感じだった。最初は言葉を聞こうと思って、何をいいたいのかなって聞いてて。小松くん(小松大二郎)のことをみんな喋ってるのかなって聞いてたんだけど、途中から、言葉ってよりか、その小松くんの動き見てた。動きがおもしろい、ってなって、後半はもう、音あんま聞いてなかった。言葉あんま聞かずに、なんか動いてたり定規持ったり、古賀さん(古賀友樹)がなんか紐もってたりして、おもしろいな、みたいな。頑張って聞いてたのが、全体の形、フォルムがおもしろいなって。

────石倉:初めてのお二人(小野彩加、中澤陽)の印象はいかがでしたか。

荒木:めっちゃちゃんとしてるな、って思いました。しっかりスケジュールの表もあったし。信頼できるなって思いました。

────石倉:実際に参加してみて、お二人の印象がそこから変わったりとかしましたか。

荒木:変わらない。自由。自由って感じ。中澤さんはおもしろい、おもしろい。彩加さんもおもしろい、おもしろい。

────石倉:おもしろい四回。もう少し知りたいです。

荒木:嘘なのか本当なのかわかんないとこがおもしろいですね。中澤さん。常に。存在が本当なのか。喋ってることすべてが、何をゆってんのかなあって、本当なのか、嘘なのか、企みなのか、素直な言葉なのかが、わかんないから、おもしろい。彩加さんはずっと動いてるし、単純に身体の動きとかがおもしろいし、時々喋ったりする時とかも、爆発的におもしろい。爆発。みたいな感じ。爆発人間、って感じがします。

────石倉:その他の出演者の人たちについてはどうですか。

荒木:みんなね、すごいね、優しい人たちです。すごく。自分の色みたいなのが強い気がする。みんな。接しやすいんですよ、とても。優しい。暖かい。心が。冷めた人がいない。人間が暖かい。わかんないけど。黒木さん(黒木龍世)はわかんないけど。安心するんですよ。メンバーを見ると。このメンバーでよかったなあ。って思います。自分も素でいられるっていうか、気を遣わない。話さなきゃみたいなのもないし。ピリピリモードみたいなのもないし。

────石倉:佐々木美奈さんが、自分より年下のみんなをしっかりしてるってゆってました。

荒木:私しっかりしてないと思う。でも、望生ちゃん(鈴木望生)しっかりしてると思う。

────石倉:鈴木さんが一番年下ですもんね。荒木さんが、下から二番目。

荒木:望生ちゃんしっかりしてる。悩み相談もできるタイプ。みんなにできる。相談。おもしろい。帰り道が、ミヲさん(石田ミヲ)と結構一緒だから、そういう相談というか、思ってること話したりとか、プライベートの相談したりとか。古賀さんも安心する存在ですね。昔から知ってるし。結構古賀さんがいる時点で、あ、やろう、参加する。っていう。安心して、参加したいな、と。

────石倉:ここから本番に向けて、近づいてますけどどんなこと思ってますか。

荒木:目標、理想みたいなのを、持たないようにしたいなあ。って。予想したくない。わかんないけど。

────石倉:荒木さんが、今後自分の人生みたいなのが何章も続いていく中で、今後に向けて、何かありますか。

荒木:顎を手術するのね。私、顔が変わるから、その時点で、章が変わる。顎と歯が綺麗になって、CMに出たいって夢があるから、それは叶えたい。今の願望。でも顎だけじゃないじゃんCMって、スタイルとかもあるでしょ。そこまでに、どういう経験を積んで、顎の手術を迎えるのかなって、考える。

────石倉:見た目によって章が変わってくんですね。

荒木:見た目気にしてるのかなあ。あるかもしれない。すぐ太っちゃう体質だから。第三章からは痩せたい、しか思ってない。常にずっと。でも痩せれない。

────石倉:CMに出たい。更にその先はありますか。

荒木:書道。習字、書くのも好きだから、そういう場も常にあったらいいな。って。


夜の渋谷にて。 撮影:石倉来輝


出演者インタビュー
古賀友樹
佐々木美奈
鈴木望生
黒木龍世
石田ミヲ
荒木知佳


緑のカラー|作品概要

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