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緑のカラー|佐々木美奈:出演者インタビュー

2016年12月に上演された『デーモン・ネーション』を含め、本作『緑のカラー』にて二回目の参加となる佐々木美奈。演劇を始めた大学時代からこれまでの自身の変遷と、俳優として舞台に立つことの価値、そして本作に向けた私感を聞いた。古賀友樹に引き続き、インタビューは石倉来輝との対談形式によって、2018年、年明け早々に晴天の下で行われた。


成城学園駅前最寄りの駐輪場にて。 撮影:石倉来輝

佐々木美奈 ささき・みな
1986年6月17日生まれ。俳優。〈レトル〉所属。2009年より2012年まで蜷川幸雄率いる〈さいたまネクスト・シアター〉に参加。2016年より藤田貴大率いる〈ひび〉に参加。俳優として、劇団子供鉅人『モータプール』、青☆組『人魚の夜』、かえるP『Color babar』、ひび『ひびの、ひび/3×3=6月。9月じゃなくて』、スペースノットブランク『デーモン・ネーション』などの作品に参加している。

何が起きる。起こさせることができるのかなって思ってる。

────石倉:美奈さんて、賢いほうですか?

佐々木:賢くないほうです。賢くないほう。

────石倉:じゃあ結構バカみたいな言葉で、僕もバカなんで、難しい言葉わかんないぞってスタンスで。

佐々木:頑張ります。

────石倉:美奈さん、スペースノットブランクに出るのは初めてじゃないですよね。

佐々木:二回目。一回目が、2016年の12月。2年前。でも、前回と今回は、なんか全然違う気がしてて、前回は自分たちですごいシーンを作って、それが集まる。であとそれをちょっと直したり繋げていったりとかをやってもらって気がついたらできてたみたいな。感じで、すごい早かったんだよね。だから通しはいっぱいやった記憶がある。


2016年『デーモン・ネーション』 撮影:三浦庸古

────石倉:今回はそうじゃないんですね。

佐々木:今回は、私もどうなってんのかもわかってないし、どうしよう、みたいな。じゃあ何をしたらいいかなあみたいな。

────石倉:感触も、全然違いますか。パフォーマーとして参加してる身体の状態とかも全然違う?

佐々木:前回はどちらかというとフィジカルな方がすごい強くて、今回は言葉の方がすごい多いから、で言葉はそんなに得意じゃなくて私自身が。逆にその言葉で何ができるんだろうなって思うこともすごいあるし、どういう物語っていうのもちょっと違うような気がしてるんだけども。何が起きる。起こさせることができるのかなって思ってる。

────石倉:上演の時にってことですか? 全体を通して、みたいな?

佐々木:上演もあるし、自分が。

────石倉:パフォーマーとして関わることに何が起こってるのか、みたいな。

佐々木:そう。

────石倉:ひとりひとりがパフォーマーとしての引き出しを物色されてるような現場ってことなんですかね。

佐々木:どちらかというと、何もいわないから。じゃあやりたいようにやれるっていう現場ではあるから、じゃあ何をやりたいかな、とか。どうしていきたいかな、とか。すごく考えてはいる。


成城学園駅前最寄りの住宅街にて。 撮影:石倉来輝

高校受験でどうしようかなあって悩んだ時に、テレビで藤原竜也を見て、一目惚れして、で、あ、この人の近くに行きたい、って思って。

────石倉:普段はダンサーとして活動されてるんですか?

佐々木:ううん。ダンサーじゃなくて、役者の方がメインで、一応。一応ね。

────石倉:普段は俳優というか。

佐々木:そう。ダンスはそれこそ昔クラシックバレエやってたくらいで。二年ぐらい前、ちょっとダンスやってみようと思ってかえるPっていう団体受けて、出た時に、フィジカルが強かった。

────石倉:最初はお芝居やろうと思って始めたんですね。

佐々木:それが大学生の時。高校受験でどうしようかなあって悩んだ時に、テレビで藤原竜也を見て、一目惚れして、で、あ、この人の近くに行きたい、って思って。そのきっかけで蜷川さんの身毒丸見て。この人のとこ行けばよかったんだって思って、蜷川さんのとこ行った。みたいな。大学が蜷川さんが学長やってところに行って。それからって感じ。

────石倉:出身はどちらなんですか?

佐々木:ずっと埼玉です。埼玉から東京の高校行って、全然普通の学校。

────石倉:きっかけ的には藤原竜也を見て。それまでこう演劇部だったとかいうことはないんですか。

佐々木:ない。全然なかった。

────石倉:大学入ってからどうでしたか。初めての演劇。

佐々木:なんか、めまぐるしかった。ずっと作ったりとか、ペアなってやるとかが多かったから、毎日のように演劇漬けというか。ちょっと座学もあったけど、そういうのばっかだったから、なんかおもしろいキャンパスライフ、みたいなのはまったくなくて。結構昔から活躍というか活動してる演出家さんの作品が、結構多かったかなあ。

────石倉:口語のお芝居?

佐々木:口語はほぼあんまない。古典古典。古典ていうかね、古典ていうのかな、古典ほど古典じゃないかもね。

────石倉:でも既成のものをやるみたいな。

佐々木:そう。大学の教授が書いたものをやる、みたいな。あ、でも永井愛さんのとかもやったかな。なんかわけわかんないままやってた。出されるものに対してこう返していこう、みたいなぐらいしかなくて。プラスアルファ的なものまで考えられなくて、必死についていこうって感じだった。で、大学が二年で終わって、その後二年間はフリーで、外のオーディションとか受けたりとかしてて、その後に蜷川さんがさいたまネクスト・シアターっていうのを立ち上げるってことで、そのオーディション受けて、そこに入ったって感じ。

────石倉:今はもう、若い人で蜷川さんの言葉聞いてる人って少ないじゃないですか。実は僕も、演劇ちゃんとやろうと思ったの、蜷川さんで、身毒丸のオーディション、中学一年の時に受けたんですよ。最年少ギリギリで、まだ声変わりもしてないし、身長もめちゃめちゃ低いし、147とか。書類通って、一次の面接みたいなのも通って、いざ実技、20人ぐらい並んで、ひとりずつやっていって、で自分の番、やって、そしたら蜷川幸雄が、『君身長いくつ?』っていったんですよ。で、『147です。』っていって。『147かあ。』っていわれて。そこで落ちて。でも、唯一蜷川さんの聞いた言葉が『身長いくつ? 147かあ。』って。


成城学園駅前最寄りの住宅街にて。 撮影:石倉来輝

なんか憧れの場所ではあるんだけど、自分がやれる場所とはまた違うのかなっていう感覚。

────石倉:ネクスト・シアターは、何年間とかですか?

佐々木:三年、二年ぐらいかな。何年いたんだろう。忘れちゃったな。三〜四年はいたかなあ。

────石倉:大学出た後の二年と、それからの感じってどうですかね。いざ投げ出されて。

佐々木:なんていうんだろう。どうしたらいいんだろうって思ってたかな。どうやってやっていけばいいんだろうとか。知ってるところはオーディション受けてみるけど全然当時受からなかったし、結構モヤッとどうやって演劇やっていくんだろうなあってすごい漠然と思ってたし。情報集める方法を知らなかった。雑誌とかだったかなあ、それくらいしかなかったから。蜷川さんのはすごく、大々的にやってたのもあったから、もうこれしかない。って思ったのはあったかな。そこに行くって決めたら、絶対行くっていうのは、あるかもしれない。

────石倉:芯が強い。芯の強さ。やらしく出てくるわけじゃなくて、潜在的な芯の強さありますよね。いよいよネクスト・シアター。それは1期生ですか?

佐々木:1期。3期生ぐらいの時に辞めたから、それでも何本か出してもらって。でも途中で、なんかここにいてもダメだって思ったんだよね。私はここにいても。もちろん今考えればプラスになったこといっぱいあるけど、自分にとっては、なんか挫折した。もうダメだな、って。私はここじゃダメだな、って。

────石倉:何がそうさせたんですか? 僕はすごい厳しいっていうイメージはあるけど。

佐々木:厳しいってのもあるし、なんか集団っていうのが苦手なんだなっていうのもあって。変に自信もあった部分もあったから、そこで折られたから。初めての人もいるし、色々やってきた人もいるから、役を取れる取れないっていうのもでかくて。最初に本があったとして、そしたらイメージとかで名前が掛けられていくの、この役誰々っていうのがあって。それは例えばエチュードの発表の成果とか、あとは役の雰囲気とかもあって、でもそれがめまぐるしくかわるの毎日。作品によってはやっぱ女子が少ないのもあったりするから、もう熾烈じゃん。私は全然取りにいけなくて、もうダメだって思ったね。ここにいてもしょうがないって思ったから、辞めます、ってゆった。すごいそれからどうしようかなあって思って、結構そういう時はっきりしてて、辞めるけど、じゃあどこに行こうかなってなった時に、じゃあ蜷川さんが嫌いだっていってる、平田オリザのところに行こうって思って。そこは、なんだろう、悔しかったから。じゃあ平田オリザ系行こう、みたいな。オリザさん何も知らないで。オリザさんに行ったわけじゃないんだけど、それが青☆組っていう、オーディション受けたら受かったの。外でも頑張ろうって思ってて、真逆行くしかないと思った。なんか衝撃的だった、ワークショップオーディションだったけど、あ、こういう感じなのかみたいな。言葉わかんないけど、ナチュラルっていわれるものだったと思うけど、これでいいのかな、みたいな、それもわからないから。それでも小夏さん(吉田小夏)がいいっていってくれたから。

────石倉:それが、いつ頃ですか?

佐々木:2014年だったと思う。人魚の夜、っていうアゴラで、でその後もちょっと呼んでくれて、出る機会があって、それからなんか小劇場系っていわれるものを受けるようになって、アマヤドリとか、谷さん(谷賢一氏)とか、そういうところにちょっと行くようになった、かな。第二章かな。

────石倉:最初に見てたポイントとは違う世界に到達した。相当大きかったですよね。

佐々木:どうやっていいかわかんなかった、稽古も。

────石倉:何を要求されるんですか?

佐々木:小夏さんはね、音の高さとか、別に何秒とかは全然いわないけど、すごく細かくいわれてたのかなあ、そんなにいわれた記憶はないんだけど。なんか蜷川さんの時にすごい大事なこといっぱいあったけど、自分が実際台詞を喋ってやるってことがほとんどなかったから、アンサンブルでいることがすごい多かったから、アンサンブルでも身体は見せていかなきゃいけないから、それがなんかすごい、そこはそこで考えられるというか、身体のこと意外と好きなんだなって思ったこともすごいあったかなって思う。

────石倉:蜷川さんに会う。入って、やっぱちげえわ、ってなった。

佐々木:なんか憧れの場所ではあるんだけど、自分がやれる場所とはまた違うのかなっていう感覚。

────石倉:それはスッとなったんですか? アッてなんなかったんですか?

佐々木:パッて思ったの。パッ、て。違うんだなって思ったの。ちょっと踏ん切りを付けなきゃなって思ったのもあるし、そこで考えててもプラスにならないのかなって思ったし。もちろん悩んだ。逃げるってことになるじゃないかな、とか。簡単ちゃ簡単じゃん。悔しいな、とは思った。でもそれをひとつの選択として、じゃあ辞めるからには、プラスに絶対したいって思ったから、じゃあ自分の居場所探そ、って思ったかな。


成城学園駅前最寄りの駐輪場にて。 撮影:石倉来輝

日常とその空間とが、すごい曖昧になりながら、劇場から出て行くみたいな、なんかわかんないけど、そういう感じ。なんかわかんないけど、植え付けられたら、というか。

────石倉:青☆組が終わって、小劇場行きだして。

佐々木:そうだね、ふらふら、ふらふらじゃないけど、ふわふわ。色んなとこのオーディション受けて、それで陽くんと出会って、すごい前に出会ってるよね、いつだっけ。2013年くらい。辞めてからちょっとだったから。そのあと話す機会が増えていって、それでオファーしてもらって、なんでだったかわかんないけど。わかんなくて、そういう風にいわれることがなかったから。なんかでもそのままわからずやってると思う。見つけたらとりあえず行く。みたいな感じで。

────石倉:そうやって行って、自分には合わないなとか、ちょっと違う。みたいなのはあるじゃないですか。そういうことがあっちゃうと、僕の場合は怖くなっちゃうんですよね。だから美奈さんは肝座ってるなって思うんですけど。

佐々木:何も考えてないからだと思う。でも、超えていきたいとは思ってる。ウィンウィン。それは大事にしてるかな。やってきてるものはあるけど、特に今回は自分より下の人たちだけだし、いままでで初めての状況、これまでは絶対上がいたから。今は私が一番上。プレッシャー。なんかみんなしっかりしてる、と思って。

────石倉:どんなところが?

佐々木:結構ハッキリものをいうから、ちゃんとみんな芯があるから、やばいなって。私あんまそういうのわかんないから、ふわふわやってるけど、みんなちゃんと我を持ってるって思いながら、やばいなって思いながら。てのもあるし、私が二回目だから、みんな訊いてくるんだよね私に。でも全然わかんない、みたいな。全然違うし、すみません、みたいな。わかんないし。

────石倉:ここから本番まで時間は限られてきてますけど、ここからどういう風に、最年長として、どういう風にウィンウィンにしていこうとか、ありますか?

佐々木:なんかわかんないんだけど、話自体もあんまわかってないけども、なんかこうしたいっていうのは、なんとなくぼやっとあって、こうできたらいいな、みたいな、なんかあるんだけど。すごい話し掛ける感じの台詞が多いから、平行してお客さんも同じ映像が見えてくるとか、日常とその空間とが、すごい曖昧になりながら、劇場から出て行くみたいな、なんかわかんないけど、そういう感じ。なんかわかんないけど、植え付けられたら、というか。


成城学園駅前最寄りの住宅街にて。 撮影:石倉来輝

私はロミオとジュリエットやるって思ってたから、藤原竜也と。で鈴木杏にやられて、あ、終わった、と。

────石倉:楽しみになってきた。話全然変わるんですけど、趣味とか好きなものとかなんですか?

佐々木:昨日、一昨日なんだけど。ちょっと本棚掃除してて、でバレエの漫画があったの、『SWAN』っていう。『SWAN』のモスクワ編ていうのがあって、モスクワ編が一巻しかなくて家に、で読んじゃったのね掃除してる内に、で続き読みたくなっちゃって、昨日久々に丸ごと三巻買ったの、二、三、四。で、読んで、昨日二回泣いたよね。二、三、四、一回読んで、まず一回泣いて、もう一回読み直して、もう一回泣く。同じシーンでもう一回泣く。あれやばいよね。久々に漫画買った。昨日。


著:有吉京子『SWAN -白鳥- モスクワ編』平凡社

────石倉:お気に入りの漫画はなんですか?

佐々木:『ガラスの仮面』も好きだし、『MOON』とか、『昴』っていうバレエのもあって、スラダンも好きだし、『バガボンド』も好きだし。あと浦沢さん系。でも結構お母さんが買ってきてるんだよね、『BILLY BAT』と、『バガボンド』とか、でも『SWAN』は、結構前で止まってたの。だからこれ買っていいのかってすごい思って、でも買っちゃったんだよね。『SWAN』もなんか演劇に繋がる部分がすごいあって、勝手にね。『昴』と『MOON』も読んで欲しい。

────石倉:埼玉の、藤原竜也、にキュンキュンした、当時の、佐々木美奈少女はどんな少女だったんですか?

佐々木:すごい楽観的に、ここ行けば、藤原竜也に会える。私はロミオとジュリエットやるって思ってたから、藤原竜也と。で鈴木杏にやられて、あ、終わった、と。その夢はもう終わったと思って。でもまだわかんない。でも、話ずれちゃうかもしれないけど、やっぱ蜷川さんのいた埼玉ってところは、やっぱ今でもすごい大事な場所ではあって、で今その、ひび、ってとこにいて、結構それも埼玉でも活動していて、なんか違う形でここに戻ってこれるってことがすごい大きくて、でもまだそれじゃ足りないけれども、なんかその劇場で蜷川さんになんか恩返しできたらっていうのが、それが今、の私のひとつ大きな目標だなあ。


成城学園駅前最寄りの駐輪場にて。 撮影:石倉来輝


出演者インタビュー
古賀友樹
佐々木美奈
鈴木望生
黒木龍世
石田ミヲ
荒木知佳


緑のカラー|作品概要

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