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緑のカラー|黒木龍世:出演者インタビュー

2017年9月に行われたスペースノットブランクの初めてのワークショップオーディションに参加し、今回初めて出演することになった黒木龍世。これまで事務所に所属しながら舞台や映像など幅広い仕事を俳優として行い、30歳手前で事務所を辞めて小劇場の舞台へと進出した理由やこれまでと全く違う現在の制作の場に参加する私感を聞いた。インタビューは石倉来輝との対談形式により、2018年、年明け早々の「緑のカラー」稽古場にて行われた。


「緑のカラー」稽古場にて。 撮影:石倉来輝

黒木龍世 くろき・りゅうせい
1988年6月7日生まれ。俳優。俳優として、テレビドラマ・TBSテレビ「毒島ゆり子のせきらら日記」「逃げるは恥だが役に立つ」、CM・KEIRIN -競輪-「人生を回せ」などの作品に参加している。

インド行くよりネパール。おすすめです。

___石倉:黒木さん。どうですか稽古。

黒木:稽古。楽しいです。すごく。なんかいままで映像とかドラマの方が自由だと思ってたんですよ。なんでかっていうと、ちゃんと後処理をしてくれるっていうか、舞台とかだと作ってる時も色んな制限の中でやらなきゃいけないので。でも今回はすごくそれを取っ払って、まず自分自身でいていいよ、っていうのをちゃんと明確に、色んな方向からケアしてくれて。すごく楽しいです。

___石倉:ちょっと簡単にですけど、自己紹介的なことできますか?

黒木:できます。大中小とありますけど。大が長いやつ。小が一番短いやつです。

___石倉:じゃあ大で。

黒木:おはようございます。黒木龍世です。ネパールです。特技はネパール語です。ネパールってびっくりしてますよね。

___石倉:しないです。

黒木:あ、しないですか。え、ネパール人に友達いますか。

___石倉:続けてください。

黒木:あの、ネパール語話せる理由はですね、学生の頃興味本位で興味本ネパールに行ってたことがありまして、そん時1週間だけだったんですけど、ネパール語覚えて帰って来て、細かいところはフェイスブック上で、英語で例えば、ナマステがこんにちは、おはよう、こんばんは、さようなら。4つ意味もってるよ、とか。それを英語で教えてもらって、今こっち帰ってきてもネパール語話せるようになってきたんですけど、そう、であと、他に僕を象徴するってことは、話すと長くなるんですけど、話した方がいいですよねやっぱり。

___石倉:全然話してください。

黒木:横浜出身で、横浜育ちなんですけど、今も横浜に住んでまして。

___石倉:横浜、多いですよね。

黒木:ネパール人ですか。

___石倉:そうです。多くないですか、横浜の方。川崎の方とか。

黒木:多いですね。

___石倉:ネパールの魅力ってなんですか?

黒木:日本にいてネパールに触れることってあんまりなくないですか?現地に行かないと僕が感じたものは触れられない。人が優しいのと、みんながいきいきしてるっていうのもそうですし、チベット側とか、原住民の方に行くと、差があったりして、すごくおもしろいです。インド行くよりネパール。おすすめです。


「緑のカラー」稽古場にて。 撮影:石倉来輝

テレビの中とか、街中のパフォーマンスしてるピエロとか、マジックやってる人とか、あの人たちの動きを見てるこっちがすごい楽しくなっちゃう、っていうのがおもしろくて。

___石倉:横浜で生まれて、その後について聞かせてください。

黒木:普通に地元で小学校行って、その後中学高校は、私立のところに行きました。男子校に行きました。がっつり。すごい厳しい。前髪が眉毛にかかっちゃダメみたいな。そのあとは、色々あって芸能活動を始めて。

___石倉:キッカケはあるんですか?

黒木:もともと小学生の時から、芸能界というか、テレビの中とか、街中のパフォーマンスしてるピエロとか、マジックやってる人とか、あの人たちの動きを見てるこっちがすごい楽しくなっちゃう、っていうのがおもしろくて。小学生の時はやりたかったんですけど、親にいったら、絶対ダメだ、っていわれて。小学生の時、演劇部みたいなの入ったんですけど、それが中学受験前だったので全然参加できなくて、だから燃焼できてない、消化不良。で、中学高校と行ったんですけど、男子校行っちゃったので、文化祭とか全くないんですよ、お芝居するとか。いわゆる芸能やりたいって思ったら、デビュー、オーディション、とかいう雑誌、を見て。手当たり次第に送って、最初に帰ってきたところが、前まで8年間いた事務所に一番最初に合格いただいて、そこ製作の映画に出て、デビューって感じだったんですけど、でそのあと、舞台とか、CMとか細々やって、って感じなんですよ。

___石倉:中学の時は何やってたんですか?

黒木:サッカーやってました。がっつり。高校まで。

___石倉:ポジションはどこですか?

黒木:サイドバックです。懐かしい。今もたまにやるんですけど、ほとんどやらなくなっちゃいました。

___石倉:その頃の黒木さんは、今から見るとどうですか。

黒木:破天荒でしたね。本当にルールが厳しい学校だったので、どうにかしてルールを破ろうっていう感覚がすごく強くて、結構周りも固まっちゃって、私立の男子校中高一貫ってなると、勉強するグループと、ふざけるグループと、その中間みたいなのがいるんですけど。最初は中間だったんですけど、高校ではふざけるグループといったりきたりみたいな。

___石倉:勉強するグループには1ミリもならなかったんですね。

黒木:ならなかったです。でも算数だけは、あ、数学だけは、すごく好きでやってたので、そこだけは勉強できるグループのクラス分けには入ってたんですけど、あとは全くです。それが格好いいみたいな、よくある思春期の至り、みたいな、その当時は自分が最先端、みたいな。いやしょうもないですね、ほんとに。

___石倉:若者感めちゃくちゃありますね。その後、高校卒業して、演劇やろうって。演劇学校に行くっていう選択肢ありますけど、それは選ばなかったんですか。

黒木:選ばなかったですね。結局自分で選ばなかったんだと思うんです。両親が両方公務員なんですよ。だからお前も公務員なんなさいっていわれてて、日芸とか桜美林とか行きたかったんですけど。野田さん(野田秀樹)がすごく好きだったんですよ。高校生の時に映像で野田さんの作品見て、すごく好きで、だから多摩美もすごく行きたかったんですけど、そういうご縁も無くって。遠回りだったんですけど、それがいい経験だったな、って。


「緑のカラー」稽古場にて。 撮影:石倉来輝

ただそれが正直、おもしろいのか、食えるのか、楽しいのか、ウケるのか、まったくわかんないです。だから、楽しいんです。

___石倉:そこから主に、映像とか、メディアの活動するようになったんですか。

黒木:そうなんです。本当にもうやりたかったので。僕は20歳過ぎてからスタートだったので、お芝居をやるっていうのは。

___石倉:その憧れのブラウン管の向こうに、初めて参加した時ってどうだったんですか。

黒木:実際は、そうでもなかったです。有名な人がいて、うわあ、ってのはありましたけど、やっぱりメディアに見せてる顔と、素顔は違うから、幻滅してしまうこともありました。

___石倉:黒木さんが憧れていた世界と、実際の世界の差っていうのは、大きかったんですね。

黒木:大きかった、です。

___石倉:それでも辞めようとは思わなかったんですか?

黒木:思わなかったです。むしろ、自分がそういうところに飛び込めることが自信になりました。なんかいままでふわふわしてたのが、なんかより固まってきて、ここでこういうことやるんだってことがわかって、そっからそれがどんどんわかってくに連れて、わくわくしてたんですけど、最初はすごいいやだなあって感じがすごくありました。

___石倉:その後、結果的に事務所を辞めて、ここ最近はどうですか?

黒木:事務所を辞めて、最近はむしろチャンスが拡がってます。いままで触れてないところ触れてきたりとか。映画美学校ってところに、2011年か2012年に入らせていただいて、様々な方と接しさせていただいたんですけど、最初俳優やろうと思った時に、デビュー、オーディション、ともうひとつ、演劇ぶっく。あれに野田さんが出てて、毎月特集があって、その僕の買った時のが、はじめの一歩、っていう。俳優になるときのはじめの一歩はどうですか、っていう。ちょうど僕がはじめの一歩、始めようとしてた時で。

___石倉:今になって、視野が拡がって、改めて見る自分の現在地から、どうなっていきたい。とかありますか?

黒木:身体のどこ使って動けるか、みたいな。正直僕、三月の5日間、とか、映像で見た時、すごい、つまんないなって思ったんですよ。三谷幸喜みたいな、いわゆるエンタメ、みたいなのががっつり好きだったんですよ。でも今になって色々、見方が変わって、それもおもしろいですよね。事務所辞めたからだと思います。だとしても自分ができるかどうかは、まだわからないです。でもできると思っているので、やりたいです。ただそれが正直、おもしろいのか、食えるのか、楽しいのか、ウケるのか、まったくわかんないです。だから、楽しいんです。

___石倉:わからないことが、楽しい。いいですね。

黒木:むしろそこにチャンスがあるんじゃないかな、と思ってます。


「緑のカラー」稽古場にて。 撮影:石倉来輝

すごく変で、すごくおもしろいです。

___石倉:現在にちょっとずつ近づいていますけど、今回スペースノットブランクのワークショップオーディションに応募するキッカケみたいなのは、なんだったんですか?

黒木:最初、直感的には、文章が綺麗だったんですよ。ホームページ見たら、枠組みがすごいしっかりしてて、参考映像みたいなのもあって、おもしろいな、って思ったんです。それこそよくわかんなかったんです。だけど、なんかおもしろい。この役者さん気になる、とか。結構調べたんですけど、いままではこうだったのか、みたいな。すごく時間を使えた。自分の人生投資できる。と思って、参加したら、ワークショップもおもしろくて。

___石倉:実際に集まってみて、一緒にクリエイションしてどうですか。

黒木:気負いがしない。個々を見ていくと、負ってるものがない。人生に対しては負ってるんですけど、作品に対してなんか、こうしてやろう、とか、変な責任がなくて、すごいラフというか、僕はどっちかっていうと背負いがちなんですけど、勝手に。その際がすごいおもしろくて。

___石倉:今おいくつでしたっけ?

黒木:29です。

___石倉:じゃあ上から3番目ですね。年下が半分。どうですか。

黒木:羨ましいです。石倉さんもそうですけど、20代前半でこういう現場に参加できて、楽しんでるなってすごく思います。今回、僕、一番特徴的なのは、演出の方が年下、っていうの初めてなんですよ。全く未知なんですね。見方が全く違うから。やってることが違うから。すごく楽しくて。だから、絶対変なんですよ。すごく変で、すごくおもしろいです。

___石倉:黒木さんの、一貫して大事にしてることとかってありますか?

黒木:ユーモアです。ユーモアあれば、戦争もないと思いますし、一番重要なのはユーモアだと思ってます。

___石倉:話していてもポジティブな言葉が印象に残りますよね。今後の展望とか聞いてみたいんですけど。

黒木:ハリウッド進出。したいですね。本当に。そっちのフィールドに行ってみたいです。

___石倉:手始めに、というか、一番近くの未来に2月の公演がありますけど、どういう風に取り組んでいきたいとか、どういう風にこの時間過ごしていきたいですか?

黒木:事務所辞めて、というか。一番最初に、デビュー、オーディション、演劇ぶっく、を手に取った時から思ってることがあって、俳優って世界で一番素敵な職業だと思うんですよ。今回自分自身が創作をしていてすごく感じるんです。贅沢な時間を、もっともっと、味わいたいです。もっとゆっくり。濃密に過ごしたいなと思ってます。でも、楽しむから、早いんですけどね。もっともっと発展できるかな。時間を大事に、使いたいです。


「緑のカラー」稽古場にて。 撮影:石倉来輝

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第28回下北沢演劇祭参加作品
下北ウェーブ2018選出
緑のカラー
2018年2月8日(木)〜2月11日(日)
於 小劇場楽園

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出演者インタビュー掲載中
古賀友樹
佐々木美奈
鈴木望生
石田ミヲ
荒木知佳

インタビュー:石倉来輝
編集:中澤陽

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