再生数|古賀友樹と鈴鹿通儀:出演者インタビュー
保存記録の植村朔也がいくつかの質問を考えて個別に出演者たちに送信し、返答を受信したものを、ここに掲載する。
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古賀友樹 こが・ゆうき Web/Twitter/Instagram
俳優。1993年9月30日生まれ。プリッシマ所属。俳優として、ゆうめい『みんな』『弟兄』『巛』『あかあか』、劇団献身『幕張の憶測』『死にたい夜の外伝』『最悪な大人』、シラカン『蜜をそ削ぐ』、劇団スポーツ『すごくうるさい山』『ルースター』、スペースノットブランク『緑のカラー』『ネイティブ』『言葉だけでは満ちたりぬ舞台』『すべては原子で満満ちている』『氷と冬』『フィジカル・カタルシス』『ラブ・ダイアローグ・ナウ』『光の中のアリス(作:松原俊太郎)』『救世主の劇場』『ささやかなさ(作:松原俊太郎)』『舞台らしきモニュメント』『クローズド・サークル』『ウエア(原作:池田亮)』『ハワワ(原作:池田亮)』などの作品に参加する他、演出補として、穂の国とよはし芸術劇場PLAT 高校生と創る演劇『ミライハ(作:松原俊太郎、演出:スペースノットブランク)』に参加している。
撮影:高良真剣
─────松原さんの戯曲には、どのような感覚をお持ちですか?
距離が近いと思います。
距離感のことです。ほぼ全ての言葉たちが自分ごとに思えてきます。ぐさぐさと刺さる、パンチラインだらけです。
わかる、わかるわー
─────『再生数』というタイトルについてはどのようなイメージをお持ちでしょうか。
理系のイメージですね。
生数って高校のどこかの記憶で見た覚えがあります。普通に読んだら再生の数なんですけど、どーんと三文字並べられると、神々しいですよね。(多分これは「数」と「教」が似てるから!)
─────スペースノットブランクの舞台では、戯曲中の登場人物の人格や思考の解釈が直接的に反映されているという印象が希薄で、むしろ出演者の本人性が強調されます。こうした演技を行う上で、どのようなことを考えておいででしょうか。
もともと自分は「この人物になりきろう!」という気持ちがあまりないので、性に合ってます。でも自分を出そうとも思ってないので、なんというか、自分の出来る範囲のことをやっている感覚ですね。だから時々自分でも「変な言い回しだなーふざけてるなー」とか思いながらやってますよ。やってる側は別になんでもいいのでね。それが表現としてどう受け取る余地があるか、が大事なので。
─────声や身体について日頃どのようなことを考えていらっしゃいますか。
特に何も考えてないです!
いつも筋トレ頑張ろうと思っても頑張れないし、ストレッチ毎日ちゃんと決まった時間やったら身体柔らかくなるかな? と思って10年が経ちました。覚悟がないのです。そんな時は自分に言い聞かせます。まだその時じゃない。
─────今回演技を行う上で、特に自信やこだわりをお持ちになっていることがあればお教えください。
ちっともそんなこと思ってないですが、場面が切り替わった時にあまり違う人にならないようにしたいです。
─────スペースノットブランクにご自身がこれまで求められてきた身体性のあり方を言葉で説明するとしたら、どのようなものになるでしょうか?
あまりそういうのを求められた記憶がないのですが、強さはひとつのキーワードだと思います。僕はしなやかな強さが好きです。
─────近年スペースノットブランクは京都での公演を重ねてきました。京都の観客の皆さんにお伝えしたいことがあればお教えください。
ハロー
2年ぶりの京都です お邪魔します
(ほんとうは1年と10ヶ月くらいです)
─────「男性性」は松原さんの作品の継続的なテーマの一つだと思われます。この言葉についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。
くしゃくしゃにしてゴミ箱に捨てちゃえ🚮
おジャ魔女のオープニングみたいになってしまいましたが、気持ちは、そうですね。
いつかの『再生数』にはマッチョという単語がありました。今その単語は別のものに変わっていますが、僕はマッチョイズムが嫌いです。
「男性性」とは少し使う用途が異なりますが、僕が育ってきた環境ではそいつが当たり前の顔をして踏ん反り返っていました。そういうのは二次元のファンタジーだけでいいです。まじでいらないです。
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鈴鹿通儀 すずか・みちよし Twitter
俳優。1990年7月4日生まれ。中野成樹+フランケンズへの入退団を経て現在フリー。俳優として、中野成樹+フランケンズ『えんげきは今日もドラマをライブするvol.1』『カラカラ天気と五人の紳士(作:別役実)』『マザー・マザー・マザー(作:別役実)』『半七半八』、ままごと『あたらしい憲法のはなし』、劇団子供鉅人『幕末スープレックス』『マクベス』『夏の夜の夢』、ピンク・リバティ『人魚の足』『煙を抱く』、財団、江本純子『忘れていく、キャフェ』、松田正隆『シーサイドタウン』、スペースノットブランク『クローズド・サークル』『サイクル(ワークインプログレス)』『ハワワ(原作:池田亮)』などの舞台作品に参加する他、松井周の標本室「標本空間vol.2 遊び場的ワークショップ集」にて『元プロ野球私設応援団員と考える応援』ワークショップ講師を務める。
撮影:高良真剣 写真提供:トーキョーアーツアンドスペース
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─────松原さんの戯曲には、どのような感覚をお持ちですか?
キーワード(というものがあるとしたら)だけでなく、魅力的なワンワードがごろごろしてます。声に出したい。『山山』も社員のせりふをほぼ全てひとりでボイスメモに録ったりしました。
─────『再生数』というタイトルについてはどのようなイメージをお持ちでしょうか。
“再生”には機器的機械的イメージと生命的イメージが五分五分で並走してるけど、”数”がつくことによって前者が強く表立つ感じです。でもその裏には後者もしっかりいるヨ、的な。
─────スペースノットブランクの舞台では、戯曲中の登場人物の人格や思考の解釈が直接的に反映されているという印象が希薄で、むしろ出演者の本人性が強調されます。こうした演技を行う上で、どのようなことを考えておいででしょうか。
これまで自分を助けもしてくれた「こうしなければならない」とか「こうあるべきだ」というような教条主義の上着は脱ぎ捨て、つとめてフラットに真摯にあろうとしています。が、ジッパーが噛んじゃってなかなか脱げない…。
─────声や身体について日頃どのようなことを考えていらっしゃいますか。
声はニ゛ャの音が強いので取り扱いに気をつけること、身体は猫背との付き合い方を思っています。
─────今回演技を行う上で、特に自信やこだわりをお持ちになっていることがあればお教えください。
日頃は決め球を自信満々にコースに投げ込むタイプなんですが、手指の感覚に若干のズレが生じてます。ここまでの4人のインタビューを読んで鶴田さんからは「試行」、奈良さんからは「シンプル」、荒木さんは「呼吸」、油井さんは「誠実」というワードを掬い上げました(稽古では共演者の書き言葉にふれることがあまりないのでうれしいです)(古賀さんは同じタイミングでこの文が出るからわからないけど「意志」)。これらと、出演以外の座組みみんなも自分に流して、基本に立ち返り最強のスローカーブをお見せします。
─────スペースノットブランクにご自身がこれまで求められてきた身体性のあり方を言葉で説明するとしたら、どのようなものになるでしょうか?
確信をもった様式(フォーム)が備える強度。その過剰さ、あるいは過疎さ。
─────2022年1月には、池田亮さん原作『ハワワ』にも出演されています。同じスペースノットブランク作品ですが、両作品を比較して見えてくるそれぞれのテキストの特徴はありますか?
『ハワワ』は原作池田さんが紡いだ種々様々の膨大なデータから生まれたものなので、箱の中にレゴもあればクレヨンやミニカーもあって「これは…紐…?」というようなものもある、あったな、という感じ。
『再生数』はしっかりレゴのフォーマットなんだけど、どのピースも松原印で、攻めた色やキレッキレな形が入ってる、という感じ。
─────「男性性」は松原さんの作品の継続的なテーマの一つだと思われます。この言葉についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。
自分の中にも深く埋め込まれているなと感じます。今回の作品でも父権と母性、大人と子ども、映画と演劇などあらゆる二項対立(に一見みえるもの)が描かれますが、単純なぶつかり合いのその先へ辿り着くことを目指します。
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イントロダクション
植村朔也
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