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再生数|鶴田理紗と奈良悠加:出演者インタビュー

保存記録の植村朔也がいくつかの質問を考えて個別に出演者たちに送信し、返答を受信したものを、ここに掲載する。

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鶴田理紗 つるた・りさ Web
俳優。1993年3月3日生まれ。白昼夢、プリッシマ所属。2015年から2017年まで、青年団・こまばアゴラ演劇学校 無隣館に在籍。俳優として、白昼夢『麒麟大天覧』、お布団『想像を絶する』、福井裕孝『デスクトップ・シアター』、オフィスマウンテン『体操させ、られ。してやられ』、劇団あはひ『流れる』、円盤に乗る派『仮想的な失調』などの舞台作品に参加する他、『愛をたむけるよ(監督:団塚唯我)』などの映画作品に参加している。自身が主宰するユニット 私は少し静かにしてるね では、映像作品『無垢』の制作や、写真作家・杉浦修治との二人展『17月3日』などの企画を行なっている。
撮影:松本和幸

─────『再生数』というタイトルについてはどのようなイメージをお持ちでしょうか。

タイトルを知った時、日常的によく見かける言葉のはずなのに、初めて出会ったかのような不思議な感覚になりました。ゲシュタルト崩壊みたいな。あとはビデオテープのイメージがあります。小さい頃に延々見ていたピングーのビデオは、一体何回再生されたのだろうか、あのテープはどれくらい擦り切れているんだろうか、など。

─────松原さんの戯曲には、どのような感覚をお持ちですか?

言葉のリズムがすごく好きです。歌うように読んでみたい。

─────スペースノットブランクの舞台では、戯曲中の登場人物の人格や思考の解釈が直接的に反映されているという印象が希薄で、むしろ出演者の本人性が強調されます。こうした演技を行なう上で、どのようなことを考えておいででしょうか。

すみません、現在絶賛模索中です…が、テキストとして書かれた言葉と、ふだん自分が話している言葉との距離を測ったり、この音で言葉を出したい時は、身体はどんな状態だったらいいのかな、など試行錯誤しています。

─────『再生数』の前には円盤に乗る派の舞台に出演されています。特に円盤に乗る派の演技体と比較したとき、スペースノットブランクの演技はどう映るでしょうか?

円盤に乗る派『仮想的な失調』では、クリエーションの中で話したり試したりしながら、目指すべき共通の演技体を定めていき、各々のやり方でその演技体を目指しました。今やっていることとはプロセスはちがうのですが、円盤に乗る派で取り組んでいた演技体も、自分の身体から生まれたものです。なので表面に出てくる演技は、意外とそんなに変わらないのかなと思います。

─────声や身体について日頃どのようなことを考えていらっしゃいますか。

最近は触覚に興味があります。ときどき自分の身体の輪郭がぼやけたり、自分の身体なのに自分のものではないみたいな感覚になると、身の回りのものに触れてみています。外にいる時だったら、ブロック塀やポール、植物などに触ってみると、接触面からじわじわと身体の輪郭がはっきりしてきます。

─────「時間」は松原さんの作品の継続的なテーマの一つだと思われます。この言葉についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。

天使でもあり悪魔でもある。つらい出来事があっても、時間が過ぎることで、感情が和らいだり出来事を俯瞰して見れるようになったりする。逆もあって、忘れたくないのに、時間が過ぎることで、大切なことがぽんぽん抜けて曖昧になり、最後はとうとう思い出せず、出来事はなかったことになってしまう。

─────スペースノットブランクの舞台に出演されるのはこれが初めてですが、クリエーションになにか新鮮な点はおありでしたか。

クリエーション初日から今日まで、本当にいろんなことを、いろんな角度から、たくさんやりました。今もやっています。そのおかげで共演者の皆さんが何を面白がっているのかとか、この人のここがステキだなとか、こんなことができるんだ、すごいな、みたいな瞬間を早いうちからたくさん目撃することができました。
あとは、リハーサル・ディレクターの山口さんの存在も大きいです。安心感があります。保存記録の植村さんや制作の花井さんも稽古場にいて、演出の小野さん、中澤さんだけではない、たくさんの視線が常にある。見られている緊張感と安心感があります。

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奈良悠加 なら・ゆか Instagram
俳優。1996年6月20日生まれ。青年団所属。俳優として、ぬいぐるみハンター『愛はタンパク質で育ってる』、青年団・こまばアゴラ演劇学校 無隣館『革命日記』、青年団『ちっちゃい姫とハカルン博士』『銀河鉄道の夜』、スペースノットブランク『舞台らしきモニュメント』『ハワワ(原作:池田亮)』などの作品に参加している。
撮影:高良真剣

─────松原さんの戯曲には、どのような感覚をお持ちですか?

発話していて心地良い言葉選びだなと感じます。馴染みやすくて覚えやすいです。
一見わかりにくそうだけど、きちんと伝わるし、チャーミングで好きです。

─────『再生数』というタイトルについてはどのようなイメージをお持ちでしょうか。

この数年でよく目にするようになった言葉だなと思います。現代的なイメージです。
よくよく漢字を見てみると再び生きるってすごい言葉ですよね。この言葉を作った人すごいなと思います。

─────スペースノットブランクの舞台では、戯曲中の登場人物の人格や思考の解釈が直接的に反映されているという印象が希薄で、むしろ出演者の本人性が強調されます。こうした演技を行なう上で、どのようなことを考えておいででしょうか。

もはや役になろうとしないようにしています。
シンプルでいいんだなというのが過去2回出演してなんとなくわかってきたので、まずはできることをやろうと思っています。

─────声や身体について日頃どのようなことを考えていらっしゃいますか。

声については、きちんと言葉を届けられる声でありたいと考えています。
油断するとすぐにブレてしまうので、もっとどっしりと確実なものにしていきたいです。

─────今回演技を行う上で、特に自信やこだわりをお持ちになっていることがあればお教えください。

まだ作っている途中なのでなんとも言えないのですが、ご一緒している皆さんは全員素敵だなと思います。

─────スペースノットブランクにご自身がこれまで求められてきた身体性のあり方を言葉で説明するとしたら、どのようなものになるでしょうか?

うまく言えないことが多いのですが言葉にできるのは、今起こっていることを嘘にしないこと、です。

─────「時間」は松原さんの作品の継続的なテーマの一つだと思われます。この言葉についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。

時間とか、宇宙とか、果てしないもののことを考え始めると怖くて気持ち悪くなってしまいます。どうにもできない大きなものから取り残されてしまうようなイメージです。

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再生数

予告編
ティーザー予告編予告編

イントロダクション
植村朔也

プレビュー記事
植村朔也:映像の終わりに寄せて

メッセージ
小野彩加 中澤陽:回を重ねる

出演者インタビュー
鶴田理紗と奈良悠加
荒木知佳と油井文寧
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インタビュー
松原俊太郎

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