岸田國士『温室の前』|ステートメント
遠く過ぎ去った時代のことはわからないことばかり。
1927年1月1日に発行された中央公論の第四十二年第一号にて岸田國士が初出した『温室の前』より抜粋を上演することになった。
それらの数字でさえ、青空文庫の末尾に書かれているだけで、本当かどうかはわからない。岸田國士が本当に存在したかどうかさえ会ったことがないからわからない。
それから92ヶ年と4ヶ月と3日後の2019年5月4日にこまばアゴラ劇場にてそれを上演することになった。
地球が誕生したのはおよそ46億ヶ年前らしいし、それが初出されたのは92ヶ年と4ヶ月と3日前らしいのだけれど。
わかっている、や知っている、はなんだか信用のできない感覚な気がするのであって、わからない、や知らない、などそれが弱さだとしたらそういう弱さを弱さとしてそれでも良いのだと徹底して受容する強さを持ちたい。
遠く過ぎ去った時代の他者の言葉だとしても、戯曲があって、それを舞台にするのが演劇だというのであれば、演劇を作るのはこれがはじめてになる。
長い沈黙。
2019年4月28日(日)
小野彩加 中澤陽