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フィジカル・カタルシス|穂の国とよはし芸術劇場PLATにて。スペースノットブランクのダンス・レジデンス滞在日誌『ほほえみ』8日目

2019年12月2日、月曜日。

一日が過ぎるのが早い。

書くことがない、というのもずっと制作をしているからで、目新しいものがありません。食べたものといえば味噌カツ丼。夜はスーパーで海鮮を買ってどんと海鮮丼を作って食べました。書くほどのことがありません。

制作は順調といえば順調で、発見の喜びに満ちています。『フィジカル・カタルシス』とは何か。という点から、第3のフェーズ「形」について徹底的に。制作というより研究の時間です。だからこれは時間を作るための時間なのだと解釈しています。舞台は上演を行なってこそ観客と出会い、世界と出会うことができます。なので、上演を行なうことは自分たちが世界と繋がっていることを認識するための場として機能しています。舞台を制作して、上演して、その繰り返しは、行動力と意識が比例していればそこまで難しいことではありません。しかしそれは「それによって生活のためのお金を稼いでいく」という意味で仕事であり、「大小問わずアクションが波紋を生み世界を変えてしまうかもしれない」という重責を負うことです。自分のためでも、他人のためでもあります。社会や世界のため、と意識している人もいると思いますが、心に思っていてもそこまで大袈裟なことを口にするのは抵抗があります。ただ、小野彩加と作る舞台が「社会や世界にどう影響していくのか」を無視して作品を作ることは即ち自分たちの行動や活動を疑うことをやめることだと思っています。どちらとも言えません。最も重要に考えていることは「自分たちのことは誰も知らず興味もない」と思うことです。卑下でも謙遜でもなく、影響力の時代に於いてそれは事実であり、事実に目を背けたくないからです。「誰も知らない」ことを、「誰も興味がない」ことを一所懸命にやっている自分たちは何者か。自分たちにとって作品同士が影響し合う東京(日本?)の舞台芸術市場で制作と上演のサイクルを引き続くことは、目の前にあるひとつの(目に見える)基準を超えるためのチャレンジでしかないと感じています。その基準を決定するための基準も多様です。「おもしろい」ことは、すでに他の誰か(たち)が十分に行なっているのです。右を向いても、左を向いても、世界は「おもしろい」こと(と混乱)で溢れています。街では大抵の人たちが下を向いています。既存の価値に成り代わる新しい価値はいつまでも増え続けます。5G(νガンダム)は伊達じゃない。「おもしろい」が渋滞し、世界と繋がるために制作と上演のサイクルが「速すぎて見えない!」膠着した現代を「超越」するために、研究を継続します。

上演に交わるすべての方向線が、必然に好奇心を刺激するために。

中澤陽


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フィジカル・カタルシス|作品概要

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